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【書評】経済学は人間臭い!「経済を見る眼ービジネス現場で役立つ」

経営学者である伊丹敬之氏が書いた本著は、経済を見る眼を養うための入門書です。

僕は工学系出身なので経済学とか経営学だとかは門外漢ですが、一般的な世間で生活しているので、経済の動きから外れて生きていくことはできません。日々流れてくるニュースが社会や経済にどう影響してくるのか、この先を見通すために必要な考え方はなんなのか。それを見る眼を養うことは今後も長く生きていく上で有用でしょう。そんなわけでこの本に興味を持ち、ふと手に取ったわけです。

経済は人間の活動の集合体

本著には数式の類いが全く出てきません。経済はマクロ的に見れば単なる統計の数字かもしれませんが、細かく見ていくとその数値は人間の活動に根ざしています。人の行動や動機、そしてそれらが相互作用して世界は動いている、ということが繰り返し語られます。

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そういった「人間の営み」として経済を見るという主張が最も濃く現れているのが第五部であり、著者は変則的ではあるがそこから読むことを推奨しています。僕もそのように読み進めていきましたが、第一部からの著者の思考を追う上で、第五部に目を通していたことが役に立ちました。

人の行動を決める3つの論理

著者は人の行動のメカニズムについて3つの論理を等しく重要に考える事が重要だと説いています。1つはカネの論理、それ以外の2つについては実際にご自分で確かめてください。

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カネは経済の血液です。経済を語ると、やはりカネの論理が中心になりがちです。しかし人間の行動はカネだけで決まるものではありません。他の論理を軽んじてしまうと正しく経済を見る事は出来なくなります。多様な論理が働き、それらが相互作用する中で支配的なモノは何か、著内でマグニチュード感覚と呼ばれていますが、それを考えることが必要とのことです。

著者の思考を追体験

第1部から第4部までは、マクロ経済や市場メカニズムについての考え方を述べ、その発展系として日本の産業について考察をしていきます。これらの章にはもちろん数式が出てきません。が、「こうなったのは何故か」というところから論理的に現象の背景を考察していく形式のため、読んでいる途中には思考の収束先が見えず、読みにくいと感じる所もあります。集中して読み進めなければどういった思考をたどっていたか迷子になってしまうかもしれません。そういった意味で、入門書ではありますが敷居は低く無いと言えるでしょう。少なくとも、気楽に読んでも主義主張や含蓄が蓄積されるタイプの本ではないと感じました。

経済の動きは面白い

色々な論理が働く経済の動きは難しいものでありますが、面白くもあると僕は感じます。やはりそれは経済が人間の営みであり、背後に人間臭いものがあるからでしょう。日本の産業を考える場面では、日本と諸外国のメカニズムの違いなど国による違いにも言及して考察がなされてあり「なるほど、そういう考えもあったのか」と思わされることが幾度とありました。この本を読んだ事で先行きの見通しが正確にたてられるようになったと言うつもりはありませんが、今までより広い視点、高い視点でもって物事を考えることを意識することを学びました。

今後はニュースを見る時も記事に書かれているままに理解するのではなく、自分なりに背景を考えて、どういったメカニズムで事件が起こっているかを考えるようにしたいものです。