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神戸製鋼のデータ改ざんは設計者として許せんでしょ

大手製鋼メーカー・神戸製鋼が自動車や航空機向けに納めているアルミ・銅製品にてスペックのデータ改ざんをしていた事がニュースになっています。物によっては10年前から行われていて、どうも組織がらみらしく、設計という職に身を置く立場からすると「悪質」の一言に尽きます。

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このデータ改ざん、最終ユーザーへの影響自体は少ないかなと思っています。理由は2つ、製造物としての評価をメーカー各社がやっていることと、設計上での安全率の存在です。

完成品の評価

設計されたものは世に出る前に評価されます。特に人に危害が及ぶような箇所については重点的に評価が行われ、十分にマージンを見た上で出荷判定を受けているものです。

データ改ざんにより設計上想定した強度が確保出来ていなかったとしても、評価内容がしっかりしていれば、メーカー側の評価で洗い出せます(そのための評価です)

もしかしたらメーカー側は開発段階の評価で、想定された強度が確保出来てない事態になったかもしれません。理論と現物の間には不確実要素が多分にあるので、すぐにはデータの改ざんまで行き着かないでしょう。

評価NGの結果が判明しなくとも、強度マージンを稼ぐ対策は単純です。現物で材料を厚くするとか、構造的な工夫をするとかで評価をクリアすることはできるでしょう。

安全率の存在

設計した物が耐える事のできる負荷を、製品が受けるであろう想定負荷で割った数値を、安全率といいます。実際の負荷の何倍まで耐えられるかを表す数値な訳ですね。

この安全率、航空機は1.3倍で車は2倍弱程度です。

材料のデータ改ざんをするとして、強度が2割・3割も現実と離れたような数値だとすぐに分かるでしょうし、この安全率で十分にカバー出来る範囲内でのスペック未達と思われます。

安全のためのマージンを使われるのはいい気分ではないですが、理論的にも強度は確保されている形となっているわけです。

材料の置き換えは起こるのか

上記の通り、ユーザーには直接的な影響は少ないと考えられます。しかし今回の件で神戸製鋼は信用を失いました。これを機に他の製鋼メーカーへの置き換えは進むのでしょうか。

僕は恐らく進まないのではないかと思います。

机上の数値はどうあれ、世に出てそれなりに実績を詰んだ材料となっており、これに対して代替品を探すとなると、諸々の検証(強度だけじゃなくて対環境や疲労などなど)にかかる工数が莫大になります。それらクリアしても、世に出てから何か起きる可能性もあるわけですしね。

その辺りを考慮すると、神戸製鋼に「しっかりと管理している事」をキツく要求するに留まるんじゃないかと思います。

設計的には許せんでしょ

めでたしめでたし、とはなりませんよね。

僕ら設計者は材料スペックを元に検討を進めるわけで、その元となる数値がいい加減で信用置けないものとなると、基盤がぐらついちゃうわけです。

評価でNG貰って設計変更を入れるにしても、何で理論通りの強度が確保出来ないのかって調査に工数割かれるし、設計変更入れるのにもお金が発生します。

スペック未達なら始めからそう言ってもらえてれば、設計側もそれにあわせた設計ができるってものです。無駄な費用・工数がかからなくなるわけです。

神戸製鋼内部でスペックに対する突き上げがキツくて、未達と言えない空気があったのかもしれません。(開発業界あるあるですね)だとしても、勇気を出して「無理」だと発する事は必要です。

そうでなければ、今回のように大きな大きな信用問題になっちゃいますからね。

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僕はアルミより鉄が好きです。