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【書評】「日本のイノベーションのジレンマ」優良企業はなぜイノベーションがおこせないのか

<まとめ>

イノベーションのジレンマを日本人に馴染みやすく説明し、近年の日本企業の現状を分析し、その解決方法を提案している書籍。

1部 破壊的イノベーションとは何か

・破壊的イノベーションとは革新的な技術の有無によらずシンプルで低価格であり「これまでの顧客層と関わりのなかった層にアピールする(新市場破壊型)」もしくは「過剰性能を解消してローエンド層にアピールする(ローエンド型破壊)」に分けられる

2部 なぜ、日本の優良企業が破壊されてしまうのか

・持続的イノベーションとそれを破壊する破壊的イノベーションの歴史を日本になじみ深い「テレビ」「ケータイ」「デジカメ」の歴史を振り返る事で紹介している

3部 破壊的イノベーターになるための7つのステップ

・個人が破壊的イノベーターとなるための指針が述べてある。既存企業については「外部に独立組織を設立する」「破壊的イノベーターを買収する」のどちらかしかないとも述べてある。

イノベーションのジレンマを日本人向けにしたもの

本書は名著「イノベーションのジレンマ」を日本企業を例にする事で僕たち日本人にも興味を持ち、なじみやすくした本です。著者はイノベーションのジレンマを書いたクリステンセン教授の教え子ということで、その根っこにある考え方は同じ感じですね。

例として挙げられる企業には「ソニー」「キヤノン」「任天堂」「カシオ」などなど日本の有名企業が多く、対象となる製品群もテレビやケータイ、デジカメなどリアルタイムで破壊されていく様を見てきたものばかりで感覚的に理解しやすいかと思います。特にケータイは、最近ガラケーの販売を終了のニュースが流れるなど完全に破壊されましたからね。

個人的に興味深かったのがカメラの項ですね。

写真撮影にテント(暗室)が必要だった専門職の時代から、画質は荒くともアマチュアが気軽に撮影できるフィルム式カメラへのイノベーション、そこからさらに画像をデータとして扱えるデジタルカメラへのイノベーションときて、現在は撮影をコミュニケーションツールとして容易に使用できるスマートフォンに破壊されるコンデジ市場と、小型で携帯性が高くオートフォーカス速度が改善されてきたミラーレスに破壊される一眼レフ市場の話まで、長い歴史が語られています。カメラはまだ日本が強い分野でもあるのでこれからどうなっていくのかと考えて見ると面白そうです。

仕事でも使えるか?イノベーターへのステップ

上記の内容だけだとイノベーションのジレンマの焼き直しにすぎないんですが、3部にてイノベーターとなるための解決方法を提唱していて、具体的な戦略からアイディアを生み出すための発想法・プロセスといったものを紹介しています。

この辺りの話はより実践的なお話になってくるので実際にビジネスでも応用で切るんじゃないかと思います。日本という国の強みも述べていて、ちょっと突拍子もない内容があったりしますが、海外経験があるからこそ出てくる意見ということなんでしょうね。

投資する上で考えたい破壊的買収

この本では既存企業が破壊的イノベーションに対抗する手段として「外部に独立組織を設立する」「破壊的イノベーターを買収する」を提案しています。既にある企業を変化させることは難しいということでしょう。

買収のための考え方というのも紹介されています。僕は投資を考えるとき、どちらかというと長く続けられそうな持続的イノベーター企業の株を好みます。ただ最近はちょいと投資の範囲を広げてみようかと考えても今して、新興市場に破壊的な企業が無いかを書いてある内容に照らし合わせてみて見るのも面白そうだと感じました。

また既存企業が買収を行うときにも、その買収の価値や是非について数値以外に考える指針にもなるのかと思います。

イノベーションのジレンマの復習も兼ねる事も出来ましたし、中々読み応えがある本だと思います。