ペンシルベニア大学心理学教授、アンジェラ・ダックワース氏の著書です。
成功者が備えているのは才能ではなくやり抜く力だ、という内容の本です。社会実験や、成功者へのインタビューなどのエピソードにより、その主張は肉付けされ説得力を持たせています。
詳細はいる前に僕の感想をざっくりと述べますと、「内容は興味深いが、自分に向けた役立つ知見に乏しい」です。やり抜く力を伸ばすための方法論も書かれていますが、若者向けだったり、子供をそのように育てたい親向けだったりします。育児者という点では僕もそうなんですが、個人的には自分自身のやり抜く力を伸ばしたく、そのための知見が欲しかったんですよね。まぁ僕はいい大人ですから、自分で考えてやり抜けよって話ではありますが。
日本人に馴染みやすい「やり抜く力」
最近の世の中は移り変わりが激しく、新しいものが次々と生まれ、いろんな物に手を出しては成熟せずに過ぎ去ってしまいます。そんな世にあって「やり抜く力」が重要だというのは新鮮さすら感じます。ただこうした「やり抜く力」は、元々日本人には馴染みやすい話ではないかとも思います。
日本人は勤勉と言われています。僕の観測範囲では、この意見に相違ありません。*1努力を美徳とする傾向もあります、そんな日本人にとって「やり抜く力」が重要だ!という話は腑に落ちやすいものではないでしょうか。
「やり抜く力」は単にやり続けることを意味しない
ただし、ただ続けるだけのことを「やり抜く」とは言わない点は注意が必要です。フィードバックを受けたり問題点を探し出し、そこを改善して…というループを続ける事こそ、やり抜く力に繋がる物です。本著では「意図的な練習」と称しています。
上記のスパイラルを回す事は、ミクロな視点では難しくありません。当たり前の事をするだけです。しかし、その当たり前を積み重ねていくことこそ重要であり、成功者とそれ以外の人を分けている点でもあります。
多くの人にとって当たり前を継続するのはシンドイです。どこかで「もういいか」と妥協をしてしまったり、満足してしまいます。成功者たちにはそれがありません。彼らは諦めないのです。それを支えるのは不変の興味をもたらす「情熱」であり根気よく継続するための「粘り強さ」です。
そうした点を改めて書籍で指摘されると、自分の日々の仕事や勉強にも「情熱」と「粘り強さ」を発揮してやろうかという気になります。
しかし、それらはどうすれば鍛える事が出来るでしょうか。
内外から「やり抜く力」は伸ばせる
本著では伸ばし方について、いくつかのヒントを与えてくれています。
詳細は読んで確かめていただければと存じます。ただ冒頭に述べたように、内容は若者、もしくは子供を育てる親に向けたものがメインです。現役バリバリの会社員にとっていまさら実践には難い、過去にやるべきだった物事が多いです。
とはいえ僕には子供がいます。子供の「やり抜く力」は伸ばしてやりたいと思いますし、そのためには僕自身も「やり抜く力」を子供に見せていく必要があります。子供は親の背中を見て育つものです。そう意識させられただけでも、この本を読んだかいがあったと言えます。
最後に
久々に自己啓発的な本を読みました。生活に対して直接役立つ知識がついたとは言えませんが、やる気を換気させるカンフル剤にはなります。
ちょいと仕事の話に絡ませるとするなら、転職でしょうか。
ブラック企業が広く知れ渡るようになってから「辛ければすぐ次ぎに移ろう」「合ってないと思ったら転職しよう」という意見を見かける事が多くなりました。体を壊すレベルの労働環境ならともかく、仕事にはある程度の苦境やストレスはつきものです。
しっくりこなくて辞めるにせよ、ある程度の経験を積みそれなりの区切りまで「やり抜く」ことは重要かと思います。そうでなければ「自分は何も出来ずに終わった」という後悔がやがて呪いとなり、逆境時に襲いかかってきます。
嫌な物に固執し続ける必要はありませんが、一定まではきちんとやり切る。まずはその事をを意識してみるといいのかもしれません。
こんな記事も書いています。
100年時代を生きるためのマインドを教えてくれます。
我々サピエンスという種族について興味深い知見を与えてくれます。
*1:製造系のベンダー、それもアジア系くらいしか知らないので偏りはありますが