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【書評】『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ』高い労働生産性はどこからくるのか?

日本人は仕事の効率が悪い、とは同じ日本人からも良く出てくる意見です。国内総生産(GDP)にしても、日本の名目GDPは世界3位の規模を誇っていますが、これが一人当たりのGDPとなると22位となります。有給も取らず長時間残業に耐えて仕事を頑張っている方は沢山いますが、それでもなお労働生産性は大した水準ではないです。

GDPで日本に次ぐ規模を誇る、ドイツではどうでしょうか。一人当たりのGDPは日本を逆転して19位です。しかし年に5〜6週間程の休暇を取り、残業もそこそこに家族と夕食を取る生活をしています。

ドイツ人と日本人、何故こうも違うのか…その問いに応えてくれるがの本著「仕事の「生産性」はドイツ人に学べ」です。ドイツで20年のビジネス経験をもつ著者が、自身の経験を元にドイツ人の生産性の元を紹介しています。

日独どちらも知るからこその比較

本著はドイツ人の考え方を、著者の実体験を交えながら紹介しています。著者は日本でも20年程度の勤務経験があり、仕事面でもプライベート面でも日本とドイツの比較も散見されます。「ドイツに学べ」という本ですから、日本の負の側面が目立つ比較が多く、日本で働いている身からすると痛いところを突かれる思いもしました。ただ、変に煽るような内容ではありません。日本人自身が辛いと感じる日本の風習に対して、ドイツ人の考え方が役に立つのでは?と提案するような書き方をしています。

生産性向上のキーワード

コミュニケーション法や時間管理法など具体的にドイツ人的な手法を紹介してくれています。それらのエッセンスを抽出すると、下記の2点に収束しているように見えます。

  • 独立・自立
  • 曖昧さの排除
  • 多様性の受入れ

独立・自立

自分の仕事の領分には責任を持ち、自主性をもって行動を行う。それがドイツでの働き方というものです。

日本では、特に会社の規模が大きくなる程、個人の自立性が失われていくように思います。何事も決定までに多方からデータを入手し、大勢でデータを突き詰めて、全員のコンセンサスが取れてようやく動けるようになる…末端はもちろん、ある程度の役職の人でも、容易にスタンドプレーが取れないのではないでしょうか。
ドイツ人は家庭を何よりも大切にするとあり、家庭の時間をもつために仕事をどのように組み立てれば良いのか。そうした事を考え、優先順位をつけ仕事量を各自コントロールしているからかそ、うまく生活を回せているんでしょう。

曖昧さの排除

会議は何を決定するために行うか、何のための仕事なのか。曖昧な内容を明確にして「必要」と「不必要」をきっぱり分ける。ここに無駄を排除する秘訣があると言えます。

日本で仕事をしていてよく感じるのは、決定権の曖昧さです。決め事の場に大勢の人が集まり、役職の上下も不明確なまま、誰が決定権をもつのか分からずフワフワした会議が続く。そんな経験があるのは僕だけではないでしょう。 仕事の期限に関しても、理由無く「なるはや」で頼まれる仕事が多く、その割に特急で仕上げないといけない内容は少ない。そんなことはないでしょうか。
本当に必要な仕事を見極め、それ以外は無理せず後日に片付ける。何となく前倒しで仕事を仕上げたがる自分にとって、見習うべき姿勢なのかもしれません。

まとめ

上記はエッセンスだけ抜き出しましたが、実際の書籍はより細分化し具体化されたお話になっています。何れも効率よい労働のためにドイツ人が実践している事と、その考え方にフォーカスし、実体験のエピソードを交えながら紹介しています。
ドイツ人的な働き方が日本に浸透していけば、生み出される価値はそのままに労働時間を短縮し、より充実した生活が遅れるようになるかもしれません。

ただし、良い事だけではありません。独立心をもって仕事をする事は自分の仕事に責任をもつ事ですし、曖昧さを排除する事で大きな問題を直視しなければいけなくなります。旧来的な日本の働き方は不自由さがある反面、責任の在処が分散されており1人で全てを背負い込む必要がありませんでした。守られている面があったと言えます。

働き方改革が叫ばれ、自分の人生を生きる事の重要性が説かれる今、僕たちは改めて「自分にとって大切なもの」を直視し、それを守るためにどのように振る舞うべきか、真剣に考えるタイミングに差し掛かっています。今後どう変わっていけば良いか、ドイツ人の考え方や教育方法は1つのいい指針になるかもしれませんね。

こんな記事も書いています。
temcee.hatenablog.com
物事を曖昧にしておくのは日本のお家芸と言えます。どちらに転んでもいいように…みたいな態度、自分は苦手です。