電機製品内の、分かれた基板どうしで電気信号をやり取りする際にフレキシブルケーブル、いわゆるフレキが使われます。
フレキは薄く(t=0.1程度)、Flexibleとあるように柔軟性があるので、折り曲げたり巻き付けられたりしながら製品内の狭いスペースを走り、分断された電気系統を接続していきます。
小型の機器には欠かせないフレキですが、一口にフレキといってもFPCとFFCが存在します。
「どっちも基板を接続するだけなのに何が違うんだ?」と、一般の人には言われるかもしれませんが、電気的にはもちろんメカ的にも両者の違いは大きいです。
メカ設計をやる人には実装回り担当する時にフレキを設計することもあるかと思います。自分も何度かフレキを描いたことがあるので、メカ設計をする上で知っておいた方がいい知見として、書き残しておきます。
FPCとFFCの違い
FPCとFFCの違いを一言でまとめると「基板かケーブルか」です。
FPCは基板なのでパターン設計出来ますし、抵抗やチップなどを実装することができます。
対してFFCは薄いだけのケーブルです。部品実装はできず、信号のやり取りを行うのみです。
FPCの用途
FPCは基板なので、高速信号のやり取りやコネクタの実装なども行えます。コネクタの実装ができる点で、メカ的にはインターフェースの配置自由度が上がる利点があります。
ユーザーインターフェースの配置を考える時、同一基板に、例えばUSBやHDMI、マイクジャックやLANコネクタを実装するとして、デザイン的にすべてのコネクタ中心を合わせて設置したいとします。
コネクタの高さはまちまちなので、基板をそれぞれ別に分けて、各基板にコネクタを実装して、本体基板まで信号を…なんてやってるとスペースを使っちゃいますし、ケーブル挿しが多いと作業でのエラーも怖いですね。(ケーブルの半挿しや抜けによる組立不良は、結構あるのです)
そんな時、FPCにコネクタを実装してやると、配置の自由度が高く、スペースも節約でき、ケーブル挿し作業も減らすことができますね。
また、FPCはFFCより屈曲に優れます。なので繰り返し屈曲負荷がかけられるところの配線にも用いられます。身近な例で言うと、デジカメの背面液晶で使われてますね。
上記は僕が使ってるα6000の背面液晶部分です。黒印刷されたFPCが本体に入っていってますね。個人的には、ユーザーが触れる箇所に配線通すのは非常に恐ろしいですが。。。
FPC設計留意点
で、FPC。すぐ切れます。
板金端のバリに触れると切れますし、下記のように、カーブしてるところのRが小さければ軽く引っ張ると切れます。鋭角に曲げすぎてもダメですね。保護シートによるケアや、組立時のハンドリングに対して注意喚起が重要です。
また、外形カット時の金型のことを考えなければいけません。外形同士近いところは近づけられる限度がありますし、シート切断の金型は樹脂やプレス品と比べて公差が大きいです。短めにできてもいいように、余長を作っておく必要があります。(そして、余長を処理するスペースも…)
後は、FPCは曲げた後の反発力が意外とあるので、部品が浮いたり、貼り付けているテープが剥がれないよう、注意が必要です。
素フレキと実装フレキ
FPCは実装できるのが特徴ですが、屈曲性が欲しくて使う場合があります。その場合はFFCのように配線オンリーとなります。この状態を素フレキと、僕は勝手に呼んでいます。
素フレキは、実装フレキで施されるスルーホールメッキが無い分、屈曲性がさらに高いです。逆に言うと実装フレキを素フレキと同じ屈曲性で見積もっていると、痛い目を見るかもしれません。
実装フレキのスルーホールメッキを部分部分に分けて実施する技術もあるようですが、とにかく、同じFPCに見えても、実装の有無で層構成が変わってくる点には留意が必要です。
FFCの用途
FFCの特徴としては、安い!早い!(造るのが)この2つに尽きます。
信号のやり取りだけを行うなら、FFCで問題ないでしょ。というのが僕の考えです。会社で他社ベンチ機をバラしてるときにFFCが出てきて、「ケチってるなーw」なんていう人がいますが、安く作れるならそれに越したことは無いです。
(FPC⇔FFCに限らず、過去からの慣習の中には「ここにそんなお金かける必要ある?」という設計が結構あったりします。)
FFC設計留意点
すぐ切れます。FPCと同じく、板金端や鋭い実装物が近い場合は、保護シートを貼るなどのケアが必要です。
FPCからの置き換えを考えるとき、折り曲げてルーティングすることになるのですが、この時にコンタクト面への配慮が必要です。
折り曲げ方次第でコンタクト面の表裏が変わること、ピン配置が逆転することを念頭に置きましょう。実際にケーブルを紙で作ってみて、それを折り折りしながら最適なルーティングを探すのが、個人的には一番早いと思います。
まとめ
FPCとFFCについて、知ってる知見をまとめました。
余談ですが、自分がフレキという時はFPCの事を指します。前の会社も今の会社も、その認識は一緒だったので、電子機器業界はどこも同じなのかもしれません。
で、フレキとか基板とか、実装関係の設計する時に共通して言えることなんですが、回路関係を見てる部署…いわゆる電気屋さんと会話しながら開発していくことが重要です。
電気まわりって、メカの視点からすると良く分からないことが多いんですよね。形状だけ見て設計してると、後の工程で痛い目を見ます。ただし、電気屋さんの言うことをすべて鵜呑みにするのではなく、メカ的にダメなことはきちんと断ることも必要です。(アクロバティックな接続を要求されたり、やけに高い輻射シートを入れこまれたりとか)
参考
フレキの作り方。
FPCとは? | 日本メクトロン株式会社
こんな記事も書いています。
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