WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

高級枕の末路

ムスコ散歩を終えて洗濯物を取り込み、ヨレヨレの枕カバーをグデグデの枕にセットするとき、ふと「この枕とも長い付き合いだな」と気が付いた。安い上に使い古された枕カバーに包まれたそれは、かつて2万円以上を出して購入したものだとは、とても思えない風格だ。

この枕を買ったのは社会人2年目くらいの時だったか。「睡眠の質を上げて仕事のアウトプットの質もアップ!」、と精神的に向上心あふれていたかつての僕は、有り余る残業代を手に某枕専門店に乗り込んでいった。

睡眠コンサルティングっていうのかな。店では寝ているときの姿勢や重量のかかり具合などのデータを取った上で、僕に最適な枕の形、クッション材の提案がなされた。僕は提案を言われるままに飲んだ。ちょろい客だ。これが若さとも言える。

高い枕は僕の睡眠の質を上げてくれた、思っていた。けどそれは本当に枕の性能故だったのか。データに裏付けされた自信と、高い金を出した満足感によるプラシーボ効果だったのでは?クタクタになった枕を見ていると、そう思えてくる。

『枕は定期的にメンテナンスしにきてください。』と、僕に枕を売った睡眠コンサルは言った。製品を売って利益を出し、メンテナンスでも設ける、呆れるほど有効な経営戦術。
「メンテナンスですね、分かりました!今後ともよろしくお願いします!」そう答えた僕は極度の面倒くさがりなので、結局一度もメンテナンスに持ち込むことはなかった。その結果、枕はクタクタになった。

それでもなお、枕は僕に快眠を提供してくれる。布団に入れば1分経たずに眠りに落ちるし、適切な睡眠時間をとっていれば寝起きも爽やかだ。これはもともとの枕のポテンシャルが高い故なのか、というと違う気がする。単純に、僕が寝具の良しあしに関わらず快眠できる体質なんだと思う。思い起こせばこの枕を買う前、ロフトで買った1500円くらいの枕を使ってたけど、その時も快眠さわやかな日常を送っていたはずだ。

高い金を出した当時の僕をバカだなと思うが、買ってしまったものはしょうがないし、このグダグダになった高級枕はまだまだ長く使うつもりだ。枕だったら結局なんだっていいんだ。それが古い物でもね。この枕におさらばを告げるのはおそらく、嫁さんが「みっともないから新しいのを買え」という時だろうな。その時まで、よろしくどうぞ。