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3Dデータがあればモノを作れる時代に、なんで2D図面が必要なの?と思ったときに読む話

3Dの形状があれば、正直なところ2D図面が無くともモノは作れます。 stlで吐き出して3Dプリンタに突っ込んでしばらく待てば、見た目は3Dデータ通りのモノが出来上がり!です。 3Dプリンタでなくとも…それこそ樹脂成型品や切削、プレス品だって3Dを元に「一応の」モノが作れるのです!

こんな時代になったにもかかわらず、仕事として行う設計には相変わらず2D図面が付いて回ります。3Dを元にして図面を描けるとはいえ、2D図面を真面目に描くと結構な工数がかかります。大物だと白紙から初めて、まともな図面になるまで1日から2日、検図して承認貰おうとすると1週間仕事になることもあります。(図面をどのレベルまで書くかで、このあたりの時間はまちまちですが)

何でそんな頑張って図面描いてるの?

と、初めて設計を行う新人さん達から聞かれる前に、思考の整理がてら、図面の意義を書き記しておきます。

何をもって「3Dデータ通り」というのか

3Dデータを作りました。メーカーに渡してモノが出来上がりました。それは3Dデータと同じものと言えるでしょうか?

見た目は確かに3Dデータと同じかも知れません。しかし寸法を測ってみると…例えばデータ上15mmである箇所が、実物では15.1mmだったとします。これはデータ通りのものと判断出来るでしょうか?

上記の例のように、現実の物体というのはデータと幾分のズレを持ちます。このズレを許容出来ないとモノは作れません。かと言って出来なりで全てのズレを許容しろと言うと、それも無理な話で…。

そこで必要になってくるのが、寸法と公差がきちんと振られている図面です!

寸法の入れ方ひとつで大惨事に

図面は寸法の振り方が大切なのです。

「寸法はルールにのっとっていれば、どう入れてもいいんだよ」なんてトンデモ言う悪い大人もいますが、それは明確に違います。

例えば、下記のように凹凸の部品を組み立てるとします。

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で、凹凸の部品を、それぞれ違う寸法の入れ方で図面を書きました。

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この2パターンのうち、片方は設計的な破綻が起きています。ちょっとみればすぐわかるので、考えてみてください。

もういいですかね?

破綻しているのはパターン②の方です。場合によっては下記のように凸が凹の中に入らない=組めないという事態になります。

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今回の例は簡単な形状、そして2部品だけでした。実際の設計は何十・何百という部品が、もっと複雑に絡み合います。それも、強度や製造性などを考慮に入れたうえで成り立たせなければいけません。

だからこそ、設計として何処の寸法が欲しいのか、どのくらいの精度が必要なのかを図面で主張することが必要なのです。

責任の所在を明確にしよう

図面で明確になるのは設計意図だけではありません。
図面は設計とメーカーの取り交わし文書であり、責任の在処がどちらにあるかを明確にしてくれます。

量産で何等か問題が起きた時に、図面通りの寸法公差および作業・検査を行っていれば、問題の責任は設計側ですし、図面指示を守っていなければメーカー側の責になります。

もっと突っ込んで設計責任だったとして…図面は誰が書いて、誰が承認したか…というところまで追うことが出来ます。そうすると、これはもう…逃げ場が無いですねw設計者およびその上司は炎上必死です。

だからこそ図面を書くにも、検図するにも時間がかかってしまうわけです。

3Dデータの抱える課題

本当のことを言いますとね、僕は2D図面無くなってほしいんですよね。描くの時間かかりますし、セルフチェックや検図で紙を大量に使うので県境的な観点でもよろしくないです。

3Dデータに設計意図を盛り込むことができればいいんですが、それは難しいのが現状です。

3Dの生データはCADのソフトによって形式がバラバラで互換性がなく、stepなど中間ファイルにすると履歴やコメントなどのデータは消えてしまいます。これでは意図も何も残せません。そもそも、3Dデータに公差を振れるようなCADはあんまり耳にしませんし…。

3Dデータに公差情報も積み込むことが出来れば、製造面以外でも応用は効くと思うんですよね。公差悪い方に振れた状態でシミュレーションをかけてみたりとか、隙間の見え方や取り付け傾きの解析とか。でも、ここ数年のCAD進化を見てる分には、そういう機能拡張はまだまだ先…というか難しいんじゃないかと思ってます。3Dデータの機能を増やす方向も、各社のデータの互換性を持たせようとする動きも、微塵たりとも感じないんですよね。イケてないですねー。

まとめ

図面は何故必要なの?という点について自分なりに思うところを描きました。

自分もいろいろと酷い図面を描いて会社にダメージを与えてきましたが、図面は自己保身という点でも大切です。証拠に残るものをキッチリ仕上げておくのは設計のみならず、社会人としての処世術なんじゃないかと思います。

あと個人的な図面のこだわりを述べておきますと、測定する時と、その結果を確認する時に迷わないような寸法の入れ方を意識しています。

例えば3つの穴が開いている時に「3xφ2」なんてまとめたりしますが、寸検結果を貰った時にそれぞれφ1.99, 2.02, 2.05という数値だけエクセルで来たりなんかして「どの穴がどの測定結果なんだー!」と聞き返す羽目になったりします。描くときはてまですが、それぞれの穴に寸法を振っておけば、そういう手間が減ったりもします。図面に関しては、曖昧なところは無い方がいいです。(描くの時間かかりますが…)

いつまで2D図面が必要とされるかわかりませんが、しばらくは無くならないものだと思うので、デジタルに囲まれて成長してきた若き設計者さんも図面の描き方は学んだ方がいいですよ。

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