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機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

【書評】デザインは設計だ!「デザインの教室 手を動かして学ぶデザイントレーニング」

僕は機構設計者。装置開発においてデザインは重要です。それ故にデザインは専門のデザイナーが行い、僕たちはその形状をCADで再現し、最終的なものとして作り上げます。こう書くと非常に友好的かつ協力的に仕事をしているように見えますが、必ずしもそうではありません。

想像は無限大で自由ですが創造には物理的な制限があります。つまり部品製造のためには加工の限界がつきまとうので、デザイナーの要望が完全に満たされるわけではないのです。僕たち機構設計者はデザイナーの夢と工場の現実の間でうまい落としどころを探るのも仕事であり、デザイナーとの衝突も稀なことではありません。その衝突を和らげるには?少しでも早くお互いの妥協点を見つけるには?そのためには歩み寄りが必要です。共通言語が必要です。デザイナーには 製造方法を、そして機構設計者にはデザインの考え方を。それがこの本を読むに至った経緯です。

デザインは和訳すると設計、つまり僕たちは元々同じなんだ。仲良くやれるはず。

デザインには根拠がある

本著の主題はこの一言に集約されています。デザインとはデザイナーの表現したい事を根拠に、必然的な図形や書体、色彩やレイアウトを用いて表現されたものです。この本のターゲットとしているデザインはグラフィックデザインで、いわば2次元のデザインであるわけですが、デザインに根拠が内包されるという事に対しては2次元でも3次元でも違いは無いでしょう。ソリッドに見せたければ角張ったデザインにし、一体感を出したければ1つの線をぐるりと繋ぎ、調和感を出したければ幅や高さなどを統一し、目立たせたいものがあれば色や大きさでアピールします。そういった感性は人種や世代を超えて伝わるものであり、そういった意味でデザインは世界共通の言語だと言えるかもしれません。

設計も強度なり感性なり、理由を付けながら寸法を決め形状を作っていきます。各種力学なり物理法則なり、よく分からない形状も突き詰めれば根拠があるんですね。そういう意味ではやはり、デザインは設計であり、設計もまたデザインと言えるかもしれません。

デザインにトレーニングはつきもの

トレーニングと副題につけているだけあって、本著ではほとんどの内容がレッスンです。前述のようなデザイン論は最初にざっくりあるだけなので、その点お気をつけ下さい。

意味を持たせるページレイアウトや、図形の配置による構成のトレーニング、色の使い方…etc. そういった基本の考え方を紹介したあとに課題が与えられ、いくつかのサンプルデザインを紹介して、最後に1つのサンプルについてデザインの考え方の解説をする。それを繰り返していく構成となっています。

著者はグラフィックデザインにもスポーツや楽器のようにトレーニングが必要なものであり、デザイン経験を積む事で「視覚的な表現としての論理」の組み立て方を学んで欲しいと語っています。僕はデザインを学ぶというより、デザイナーの考えに触れる意味で読んだのでトレーニングは真面目にやってないのですが、自分でデザインする事に興味がある人は実際に手を動かしてみると良いと思います。著者もそれを望んで本著を書いた事でしょうし。

実はこのブログのTOPも...

とかなんとか言いましたが、実はこのブログのTOP画像は練習の意味もかねて自分でデザインしたものになります。設計者ということで図面をモチーフにしたりアイコン部を6面図にしたり、文字の位置関係とも関連づけたり…まぁ、いろいろやってます。一番目が向きやすい中央付近が空白地帯になってたり、文字のフォントが図面っぽくなかったり、個人的に納得いってないところもあるんですが、これはMac版のInkscapeが使いにく過ぎたのでしょうがないです。*1MBAでデザインするのは苦痛の一言でした。やはり作業するときはWindowsが一番です。

デザイナーさんと仲良くなれたよ

本著を読んでからデザイナーさんと少し分かり合えたような気がします。まだよく分かんないこだわりを説かれることはありますが、デザイナーさんの中には彼なりの世界観が有り、それはできるだけ尊重してあげるべきかなと考えるようになりました。個人的に0.05mm以下の寸法を入れたり、図面上に数字で規定できないようなスプライン曲線とかを使うのは部品管理を考える上で好ましく無いと思ってはいますが、問題ない範囲でちょこちょこ頑張ってみます。世界の合い言葉はデザイン!

*1:インストールは面倒だし、文字は直接書けないし