電機屋に行って展示品を手に取ったとき。
新しい製品を買って開封するとき。
どうも僕たち設計者は普通とは違う動作をする傾向にあります。いわゆる職業病ですね。
職業病、本来は従事する職業によって特定の疾患にかかりやすくなることを言います。ただし、今回ぼくが意図する職業病は、そういった疾患ではなく「職業特有の癖」のことです。
こんな振る舞いをしている人がいたら、その人は設計開発をやっているのかも。そんな「設計者あるある」を紹介します。
部品の隙間を異様に拘る
部品間の隙間はいつも設計者を悩ませます。実際の設計値はともかくとして、部品そのものの公差や組立による微小なズレが蓄積する事で、最終外観に隙間が生じる事は、実際に良くある事です。
それだけに設計をやっている人は、製品を手に取ると動作確認を行う前に全周を舐め回すようにして隙間を確認します。シルバーや白系は特に隙間が目立つので、入念です。隙間が詰まっているかどうか、だけではなく、隙間が均一かどうかも確認します。そして気になる隙間を発見すると心の中でつぶやくのです。「大した事無いな」と。
部品の色差にイチャモンをつける
素材が違うと、塗装をしても同じ色にはなりません。プラスチックと金属はもちろん、PC+ABSとガラス入りPCなどのプラスチックの種類が違うだけで、色は合わなくなるものです。違う部品メーカーで作っている場合は、なおさら色合わせの難易度は上がります。この、絶対に合わない部品同士の色の差を、どれだけつめられるかも設計にとってタフな任務の一つです。
だから製品を眺める時は、部品同士の色の差にも注目します。この辺りは設計をしている人でなくても、光の当て方を変えるなどして見ると、違いが分かるかと思います。
高価格帯の製品は品位のために、このあたりを凄く頑張っている事が、見て取れます。意識して展示品を比べて見ると楽しいです。
色が全然あってない製品を見た場合も、隙間の時と同様に「大した事無いな」とつぶやきます。
押したり曲げたり
通常の使い方では触らない所をグイグイ押したり、製品をくの字に曲げようと力を入れたりする。これも良くやってしまう動作です。
これは単に製品の信頼性を確認しているだけでなく、品位を確認しています。プラスチックは特に押すとたわみ易いです。変形したり破損したりしなかったとしても、押してペコペコするものは品位が無く、ださいです。そういった所をきちんとケアしているかどうかは、意外と重要なことです。
また、時々製品に力を加える事で「キシミ音」が鳴るものがあります。部品同士が微妙にこすれることによって起こるものです。設計要因というより製造要因なので、修正は中々に苦労します。最終的にはサンコールなどの潤滑剤を塗ります。
設計者が製品に力を加えて、上記のような問題が製品に発見された場合も、これまでの例通り「大した事無いな」とつぶやきます。
蓋の開け閉めやスライド動作を異様に行う
動作する部分は品位ポイントです。時には激しく、時には慎重に、何回も繰り返し動作を行います。
ツメの引っかかる感触、スライド動作のスムーズさ、動作による異音の検証…動作する部分は設計も製造も難しい所です。それだけに設計者が特に注目する箇所になります。スライド動作は特に、動作トルクの調整やガリガリ感、音などの調整が難しいので、他社製品を触る時は、これでもかというくらいスライドさせちゃいますね。
これも気になる所が見つかれば「大した事無いな」とマウンティング完了です。
しつこいボタン押し
設計者はボタンが大好きです。他の人が設計したボタンの、押した時の感触や、ボタンが作動するまでの深さ、音の大きさが気になるものです。自然と、しつこい程にボタンを押して感触を確認してしまうものです。
クリック感の強弱や、ONまでの深さなどは個人によって好みがあります。一概に正解かどうかなんて分かりませんし、全ての人にウケる品質なんてものは不可能です。
ただそんな事は設計する側の理屈であり、ユーザー側に立った設計者にとっては関係ありません。自分の好みに合わなければ、やはり「大した事ないな」となります。
結論:気持ち悪い
設計者が一般の製品を見たときあるある、いかがだったでしょうか。正直な所、僕は気持ち悪いと思いました。しかし僕も意識してないとここに書き上げたような振る舞いをしてしまうわけで、キツイですね…これはキツイ。
人によって、職業によって、こういった職業病はマチマチでしょう。皆さんも注意した方が良いです。その振る舞いは、一般の人から見ると奇妙に写るかもしれません……。
こんな記事も書いています。
まさに、実践してみた記事です。
そのうち時間があれば国ごとのユーザーの特徴もまとめてみたいものです。
感触などは頑張って数値化して管理してますが、感性的な所はどうしても人の手による所が大きいんですよねー。