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機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

CADのノウハウが蓄積されない問題

業務で良く用いられる、ハイエンドCADはCreo(Pro/E)、NX、CATIAの3つがメジャーです。僕はこのうちCreoというCADソフトを使っています。*1

ハイエンドCADはライセンスが高価な上に、動かすためのマシンも相応の性能が要求されるため、会社外で使用している人はほとんどいないことでしょう。そんなわけで、ソフト・サービス系と比べてネットに転がっている情報が極端に少なく、調べても単純な機能説明が見つかるのみです。

そんなわけでCreoを使って部品を作っていく上でのノウハウは会社内にたまっていくことになります。ここでいうノウハウとは「効率の良いモデリング手法」「メンテナンス性のいいデータの作り方」です。設計工数の削減をしていくには、設計的なスキルのみならず、ツールの効率的な使い方を知っている必要があると、僕は常々考えています。

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※以下、CAD(Creo)を使ったことある人向けのお話になります。

Creoで部品を作る場合、部品自体の基準の取り方や、スケッチを書くときの基準などが人によってバラバラになり得ます。僕のモデリング方法を例にとってみましょう。

独立性を重視するモデリング

僕のモデリングは製品として設定した基準面を部品の基準とし、部品のスケッチもその基準から寸法を追って作る方式です。それも、できるだけ単純形状を積み重ねて作るようにします。この方法で作ると、各形状の独立性が高まり、ほかの寸法変更に引きずられて意図せず形状が変わることを防げます。頻繁に形状が変わる設計検討時に有用ですし、他の人へ引継ぎ後のメンテナンス性も高いと自負しています。エラーも起こりにくいです。反面、部品の履歴(コード行数みたいなの)が長くなったり、最初に形状を作るのに時間がかかったりします。

状況によりモデリングの最適解が異なる

このあたり、何を重要視するかによってモデリング方法は変わってくると思います。大型の部品を複数人で作業するため、それぞれ別ファイルで部分部分の形状を作りこんで、最後の1ファイルにマージすることもあるでしょうし、1人で全部品をフォローするなら、各部品をバリバリに関連させた方が早く形状を作りこめます。(後者はエラーが起きやすくて、僕の嫌いな作り方です)CADモデリングはプログラミン言語のコーディングと比肩する程度には自由度が高く、同じ形状を作るにしても無数の方法があります。

口伝でしか蓄積されない問題

ただ、ネットはもちろん会社内でも、そういったノウハウを積極的にまとめられる場所がありません。前職ではノウハウは完全に個人持ちでしたし、現職は小技程度はまとまった情報があるものの、上記のような「効率やメンテナンス性を意識したモデリング手法」については基本的にOJTで口伝がメインになってしまっています。

これの何が問題かというと、新人のスキルが上の人やチームメンバーで大幅に左右され、独学でなんとかすることができないんですよね。知らないことは知りようがありません。部として、会社としてノウハウがあるはずなのに、それを生かすことができない。CADというツールの使い方は、重鎮設計者が軽視しがちなものですが、部品の製造方法に並ぶくらい重要なノウハウであるはずです。それを活用できないがために無駄な工数がかかっているかと思うと、なんとももったいないお話で。

命名規則など業界としての共通言語も欲しい

ノウハウの話から飛躍しますが、プログラミング言語よろしく共通言語のようなものも欲しいところです。今まで何十人もの3Dデータを見てきましたが、大体の人は押し出しは押し出しの名称のままで、その末尾が数百になるまで平気で履歴を積み上げていってます。結果として、その押し出しが何を意図したものが全く分かりません。位置決め?微調整?ざっくり?加工限界?何も分からず・分からせず、フリーダムになっているのが、僕の目から見たCAD界隈の現状です。新しく自分で作った方が早いぜ!という状況もしばしばです。

モノづくりの国と言われ、ソフトはハードより軽視されているという意見も散見されます。その割に、ハードの実務スキルを学ぶ場がほとんどないよなー、と感じる今日この頃です。

こんな記事も書いています。

temcee.hatenablog.com

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製造周りの知識も大学ではあまりやらないですよね。

*1:Parametricの方です、フリーのElementsじゃないですヨ