WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

誰が僕をブラック消費者にした

先日、友人が下記の記事に対して「ブラック消費者が変わらないと」という意見を述べてて、「そうだよなー、多少の不便も受け入れないとなー」と僕も納得していた。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161114-00000153-sasahi-life

しかし別の友人がその意見に対して「提供されているサービスを利用しているだけでブラック消費者と言うのは腑に落ちない」「サービス提供側がシステムや制度を変えて対応すべき」と言った旨の反論をしていた。これも言われてみればそのとおりで、別に僕は「無料で再配達に対応しろ」とか「注文からは1分で飯を出せ」とかでクレームを入れた訳ではない。企業が顧客のニーズを分析して勝手にサービス提供したものを、僕はただ便利だ便利だと利用しているだけだ。だけどそういったサービスに浸るうちに、僕は現場で働く人の負担を増やすブラック消費者となっていたのだ。

 なぜ現場に過度な負担を強いるようなサービスがまかり通っているのか。その原因は現場の声がサービスを考案するような上流部門まで十分に響いていない事なのかなと、僕は思う。それは声を聞き入れない上流が悪いのか、十分な声を出せない現場が悪いのかと考えたが原因を人に求めるのはよろしく無い。結局の所システムが良く無いから現場の声は響かないのだ。

 

現場の声を拾う、というのは難しい。顧客の不満には敏感に反応するような会社でも、自社の社員の声に日頃から積極的に聞いていこうというところはなかなか無いのではと思う。何ヶ月か一度、直属の上司との面談があるくらいで、上流工程の部署に直接物言いできる機会なんてほぼ無いんじゃないかな。また、たとえ会社がES(従業員満足)に積極的だったとしても、いち社員にとって会社の決定方針に逆らうような意見を上に挙げるのはなかなか勇気が必要な行為だ。そして多大な勇気を振り絞って声をあげたとしてもいち従業員の声だけでは会社を動かすことは出来ない。

 

本来ならそういった個人の力ではどうしようもないことについて解決するために労働組合ってものがあるんだろうけど、これも機能してないところが数多あるのではないか。労働組合が機能していたなら起こらなかったであろう労働問題を、僕は何度も見てきている。労働組合が支持していた民主党が何一つ労働環境の改善を行わなかったこともあり、僕は労働組合に何の期待も抱けない。

 

この現状を打破するもの、それは純粋に利益を求める会社だ。利益を愚直に追求するからこそ、労働環境にメスを入れるのだ。情報の伝達速度が早まった今日では、ブラックな労働環境による会社のイメージダウンは人材確保と客の印象の両方の面でダメージを受けてしまう。だからこそすき家はワンオペをやめたし、他の飲食店なども従業員の待遇改善が進んでいるのだろう。ちょくちょく国内の飲食業に投資している僕からすると人件費の高騰は短期的に業績を押し下げるのでツラくはあるのだけど、持続可能な成長のためには必要な事だ。長い目で見よう。

 

さて、誰が僕を僕はこれからも提供されるサービスはどんどん使っていく。その中にはやはり現場に負担を強いるような過度なサービスが含まれているかもしれない。そしてそういった持続困難なサービスは変革されるか消えていき、それを不満に思うユーザーをターゲットにして新たに改善されたサービスが現れるのではないだろうか。そうやってサービスがユーザーの便利と労働者の無理の間で行ったり来たりを繰り返していくうちに、双方の都合が付く所に落ち着いていくのだろう。そしてその収束地点までの早さを決めるのは、月並みだけど現場の声を救い上げる仕組み・システムだ。