WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

富士通のPC事業に思う、堀のないビジネスの弱さ

富士通のPC事業がLenovoの傘下に加わる、というニュースが流れてきた。 

この話が実現すれば、独立する大手国内メーカーは小型高性能を追求するVAIOに、かつてラップトップPCという市場を作り出した東芝、あとはタフさがウリのPanasonicか。ちょっと前に統合話が出ていたVAIOと東芝もビジネスとしてハードな環境にいることは想像に難くない。

 

個人的には「マジか!?」という気持ちが2割、「やっぱりなぁ」という気持ちが8割くらい。マジか、の理由については次の2点だ。1つは前述の東芝・VAIOとの話が折れたので独立で頑張っていくのかなという考えがあったこと。あの話が出た時は負け組同盟なんてことも言われていたが、日本のPC勢は国内以外はさらにパッとしない存在なので、日本メーカーで固めて日本のビジネスに集中するなら、あの時点での統合もありだったのかと思う。どのメーカーも製品価格は高めで、似通った販売方針だろうしね。2つめは、PC事業は富士通本体のITベンダーとしてのビジネスとも関連する事業なので融通が利くよう手元に置いておきたいといったことも考えられたこと。佐賀県とか、学校にタブレット売ってたよね。百貨店とかに置いてる2in1にも富士通製をちょくちょく見かけてたし、あれってシステムと抱き合わせだよね?

 

まぁ、統合に関する僕の考えは置いておき本題に移ろう。

 

PCビジネスは単なるコスト競走のビジネスだ。OSはMicrosoftCPUはインテル、メモリはサムスン・ハイニックス、HDD・SSDはシーゲートや東芝、LCDはLGやSHARP、実装部品は村田製作所かな。それぞれの部品は効率的に分業され深化して性能を向上させていき、結果として製品メーカーはこれら専業のベンダーから買ってきて組み立てるだけになってしまった。他と差別化できる要素があまりに少ない。コスト以外では外装設計くらいでしか差別化を図れず、その外装設計はPCの需要層にとって数万円という価格差を埋めきれるものではない。その点、タフさというハード部分でいち早く差別化したパナは偉いし、OSで差別化できる林檎は強いよなぁと。

 

主要な機能を自分で弄れないビジネスは結局価格勝負になり、賃金が安く開発コストの低い企業に駆逐されてしまう。部品や機能の共通化は多くの人が参入しやすくなり市場拡大を助けてはくれるが、堀を失いコストで殴り合う市場は勝者敗者関係なく参入者の血で赤く染まる。