WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

【書評】「新築マンションは買わないほうがいいワケ」

僕はね、マンションが欲しい。会社まですぐに出られて、主要な都市への接続もいい、駅徒歩10分以内のマンションが欲しい。常々そう思っている。そんな僕がこの本を手に取ったのは必然だった。

 

日本の新築信仰ってなんなの?

 現状の日本の住宅市場は新築物件が主流だ。投げ入れられる新築マンションのチラシ、建売一軒家の内覧のお知らせ、不動産屋に「僕は中古マンションがいいんですけどね」と言った時の苦虫を噛み潰したような表情…それらを見れば、僕でもわかる。

筆者の城戸氏はそんな日本の住宅市場を空き屋率や海外市場との比較データをもとに批判している。海外との比較については島国で自然災害豊かな日本と、諸外国と比べるのはフェアではないかなーと思うところはある。ただ僕自身は新築で家・マンションを買うのは一般サラリーマンには厳しい時代になってきたのでは、と思っているので中古市場にはもっと活発になってほしい。 

大切なのは自分のライフスタイル

新築批判はあるものの、この本で提案する住宅の買い方は目の前の損得に囚われずに自分のライフスタイルにあった物件を買うということだ。なんのために住宅を買うのか、自分の最も大切にしたい価値観は何なのか。そういった部分を掘り下げず、資産価値や周りの意見を重視して闇雲に住宅を決めるのは人生にとって大きな損失である。そういった思いが節々から伝わってくる。

この「お金に囚われない」「資産的な勝ち負けに拘らない」という考えは住宅購入以外の面にも言えることだと、僕は思う。確かに今の時代は資本主義で、お金を手にした成功者は大正義で幸せをつかむように思われている。しかし実際に人生の充実度という点で見ると決してお金だけで決まるわけでもなく、趣味や家族、友人や仕事の充実などのいろいろな要素が絡む。お金はあくまでそれらを維持するための糧であり、お金そのものを目的として他のものを疎かにするのは本末転倒だ。

リスクヘッジのための資産価値

そうはいいつつ、住宅購入において資産価値を考えないわけにはいかない。変化の激しいこの時代、永住を望んでいても職場の変更や転職などなど、立ち退かなければならなくなることもあるだろう。そうした時に「貸せる」「売れる」という視点で住む街、住宅を見ることは重要だ。具体的にどういう優先度で、どのような街・物件を…というのは本を手に取って、どうぞ。一つ言えるのは新築物件は値下がりが大きく、中古物件はある程度の年数で落ち着いてくるということ。一般人が新築を買おうとすると大多数は住宅ローンに頼ることになり、途中で手放すことになった時に売却価格と購入価格の差分を耐えられなくなる…そんな事態にならないように、住宅選びをする必要がある。

中古マンションのリノベで不動産資産を!

適切に管理されたマンションは長く住むことが出来る。中古マンションは実際に部屋や建物の状態を見て購入することができ、またある程度の年数がたった物件は価格の変動もある程度落ち着いてきている。内装は最近はやりのリノベーションでライフスタイルに合わせて変えられるので、建物の状態や管理が不明な新築物件よりも中古マンションが、これからの一般人には合っているのではないか。僕自身も住宅購入の方針としては中古よりの考え方であり、「どういう視線で物件を探せばいいか」という点は非常に参考になった。 

ただし問題もある。僕は不動産の専門家ではない。そんな僕が中古マンションの管理状態を正確に把握できるのか、という点だ。不動産業者も本によれば「不動産の売買」の専門家であり、また不動産を売りたいという立場もあり、不動産の状態について適切な判定をしてもらえるのか、というのは大いに不安である。中古マンションの市場を広げるには気軽にして独立、かつ信頼できる不動産の専門家が身近になる必要があるのではと思う。

嫁さんに一蹴された

僕「ほらー、本にもこう書いてあるし、新築だけで探すのやめようよ~」

嫁「そんなこと知ってるわよ。職業柄、不動産の専門家も周りにいるし。私はそういうのを全て知ったうえで、それでも新築がいいの!お互い頑張ろう」

僕「」

人生は厳しい。