WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

泥酔者は二度目の夢を見る

オムロンが暴落した日は僕の歓迎会だった。楽しかった一次会、焼酎ロックを最後に意識は途絶え夢の世界に突入、見知らぬホテルで目が覚めた。覚えているのは喉を通る吐瀉物の味だけ、失ったものはホテル代、携帯電話、そして「あなたって最低」とメモを残して消えた妻。僕はいったいどうすれば…

 

携帯電話を失った僕は家に帰るなりPCを起動した。家に固定電話はない。携帯は失った。嫁はどこに行ったかわからない。この状況でもメールだけは使える。僕はアルコールが抜けない状態で強制覚醒させた頭で、無連絡朝帰りの謝罪文を作成し、送付した。まずは一手だが、メールは読まれないことが多々ある。シャワーを浴びて見た目を整えた後、次の行動に移る。

 

朝10時、最寄りのドコモショップが開く。1ヶ月ぶりに乗ったEscapeR3は、空気の抜けたタイヤで僕をたどり着かせてくれた。開店から賑やかな店内、僕の待ち時間は1時間、長すぎて待てない。そこで僕はSっぽい女性店員から店の電話を借りることにした。怪訝な顔をされながらも子機を借りた僕は、真っ先に嫁にかけた。出ない、流れる留守番メッセージ、僕は心からの謝罪を独白した。次にかけたのはドコモの紛失相談の窓口だ。まずは携帯をなくした旨を伝え、届出がないか確認…無し。次に遠隔で位置を探れないか…ボツ、携帯の電池が切れてるらしい。しょうがないので回線ロック。やるべき手続き終了、僕は子機をS女性店員に返して店をあとにした。

 

帰ってメールを確認するも、嫁からの連絡はなし。その後定期的にメールを投げながら、手書きの謝罪文を作成する。執筆中に沸き立つ申し訳なさ、携帯電話がないことの不便さ、そして記憶がない間に自分がしていたことに対する不安、恐怖…多くの負の感情が僕を支配していた。そして日が沈んだ頃、玄関に音が鳴り響いた。

 

帰ってきた嫁と対面、インフルが怖いので手洗いうがいを行い、リビングにて再度対峙する。僕は述べた。謝罪の言葉を、携帯をなくして連絡が取れなかったという言い訳を、そして今後への対応を。僕が連絡できなかったのは何故か、携帯を失ったのは、記憶を失ったのは何故か。なぜ、なぜ、なぜ…繰り返されるなぜなぜ分析。やがて確信に到達する、酒が悪いという結論…そして飲み会の席でのアルコール量を制限するというガイドラインを建てることを主張する。これで僕は記憶を失わず、帰りが遅くはならない。根本的な解決策…しかし嫁からはもう一つの条件を提示された。

 

翌日、僕と嫁はディズニーランドに来ていた。費用は僕もち、荷物持ちもだ。しかし嫁は笑顔だ、僕は愛を取り戻した。まだ無くした携帯は戻っておらず、記憶のない時に僕が、もう一人の僕が何をやったのかは定かでは無い。しかし携帯が無くても、職場の人にドン引きされてたとしても、家庭が安泰ならなんとかなるのだ…。それに今回の出費はオムロンの暴落分と比べると誤差範囲だ、僕の金銭感覚は狂い、思考回路もショート寸前。お金について考えることをやめた僕は、満面の笑みでミッキーと写真を撮るのであった。